【完全版】業務委託契約書に著作権条項を必ず入れるべき理由と、入れないリスクとは?
業務委託契約書を交わす際、「著作権の取り扱い」について、きちんと明記されていますか?
実は、多くの中小企業やフリーランスがこの“落とし穴”に気づかず、大きなトラブルに巻き込まれるケースが後を絶ちません。
本記事では、行政書士として契約書作成・チェック業務に携わる立場から、著作権条項を入れないリスクと、入れるべき理由について具体的事例・条文例・注意点を交えながら徹底的に解説します。
1. 業務委託と著作権:なぜ問題になるのか?
まず基本を押さえましょう。
■ 業務委託=「成果物」を納品しても、著作権は委託者のものではない
たとえば、外部のデザイナーやライター、動画クリエイターに「制作業務」を依頼して成果物を納品しても、著作権は原則として制作者(受託者)側に帰属します(著作権法第17条第1項)。
つまり「お金を払ったから自分のものだろう」と思っていると、法的にはあなたの会社に著作権がない=勝手に使うと逆に“権利侵害”になりうるのです。
2. 著作権条項がないと起こりうる3つのリスク
① 二次利用できない(再掲載・パンフレットへの転用が違法になる)
Web制作物やチラシ、ロゴなどを他の媒体に転用すると、「契約外利用」として損害賠償請求されるおそれがあります。
② 契約終了後にトラブルに発展
「退職した元社員が作ったマニュアルに著作権がある」と主張され、削除要請や差し止め請求を受けるケースも。
③ 著作人格権の行使で公開できなくなる
著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権など)は譲渡できません。つまり、契約書に「不行使特約」がないと、あとから「名前を表示しろ」「修正するな」と言われ、公開や修正に制限がかかることもあります。
3. 著作権条項で入れておくべき3つのポイント
著作権条項を入れる際は、以下の3点を必ず盛り込むようにしましょう。
● 著作権の「譲渡」明記
単なる「帰属」では不十分。以下のように明確に書くべきです:
「受託者は、本業務により作成した成果物に関する著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)を、委託者に譲渡する。」
● 対価に著作権譲渡の報酬を含める旨
無償で譲渡すると無効になる可能性があります。契約金額に「著作権譲渡対価を含む」と記載しましょう。
● 著作者人格権を行使しない特約
「受託者は、当該成果物について著作者人格権を行使しないものとする。」
これがないと、後から制作者に修正・公開を拒否されるリスクがあります。
4. 社員と外注で取り扱いが異なるので注意
**社員が作成した成果物は、会社が著作権を自動的に持ちます(職務著作)**が、外注や業務委託ではそうなりません。契約書で個別に取り決める必要があります。
5. よくある誤解とその対処法
「クラウドソーシングの規約で大丈夫でしょ?」
→ No。プラットフォームの規約に著作権譲渡の記載があっても、業務委託先が把握していないことも。必ず個別の契約書でも記載するべきです。
「ロゴや動画、チラシのテンプレも対象になる?」
→ Yes。すべての“創作的表現物”は著作権の対象です。テンプレでも編集・加工していれば要注意。
6. 行政書士が作成・チェックする際のポイント
- 「成果物の定義」が曖昧でないか?(例:「成果物には、テキスト、画像、デザイン、プログラム等を含む」など明確化)
- 著作権の帰属先・譲渡内容が具体的に書かれているか?
- 譲渡する権利の範囲に「27条・28条」も明記されているか?
- 著作者人格権不行使条項があるか?
- 複製・改変・公開・サブライセンスなどの権限範囲が明記されているか?
7. まとめ:著作権条項がない契約書は危険
業務委託契約における著作権は、無意識に放置していると重大な法的トラブルを招きます。
契約書に**「著作権譲渡+対価明示+人格権不行使」**の3点セットを明記するだけで、後々の揉め事を99%防ぐことができます。
業務委託契約書の作成・チェックを依頼したい方へ
当事務所では、以下のサポートを提供しています:
- 著作権条項を含めた業務委託契約書の作成(PDF・Word形式)
- 現在使用している契約書のリーガルチェック(1件から対応)
- 著作権譲渡契約書単体の作成
- 内容証明による著作権侵害への警告文作成 など
トラブルを未然に防ぎ、安心して業務を委託・受託できる環境を整えるために、ぜひお気軽にご相談ください。
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